シン・ぱいおつ日記

ぱいおつが始まります

環の単位元と部分環の定義の話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

このあいだむぐむぐ勉強会で部分環の定義について雑談をして, 楽しかったです.

そこで, 今日の記事のテーマは, 部分環の定義です.

※なお, この記事では, 環は必ず単位元を持つものとします. 

※可換性は特に気にしません. 

 

早速ですが, 部分環の定義を述べます. 

部分環の定義 A を環とし,  B A の部分集合とする.  B A部分環 であるとは, 次の条件 (1), (2) が両方とも成り立つときをいう.

(1)  B A と同じ演算で環となる. 

(2)  A単位元 1_{A} とおけば,  1_{A} \in B となる. 

数学を勉強している人の中には, 「この (2) の条件は一体なんやねん!」とモヤモヤしている人もいるんじゃないでしょうか. 

今日は, そんなモヤモヤを解決したいと思います. 

 

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ポアソン分布の性質を使ってある数列の極限を求めてみよう

こんにちは. 

ぱいです. 

 

このあいだ会社の図書室で本を立ち読みしていたら面白い問題があって面白かったので, 紹介します. (参考文献 [1] の p.49, 演習問題 2.8)

問題次の極限はいくらに収束するか?
\begin{align} \lim_{n \to \infty} e^{-n} \sum_{k=0}^{n} \dfrac{ \ n^{k} \ }{ \ k! \ } = ? \end{align}

 

この問題の意味は,「指数関数  e^{n} とその巾級数表示の部分和  \sum n^{k} / {k!} を戦わせてみよう!どっちの方がどれくらい速く発散するかな!?」という感じだと思います. 

 

ヒント:ポアソン分布と中心極限定理を使うと解けます. 

 

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給付期間 ∞ の累加型確定年金の現価の求め方

こんにちは. 

ぱいです. 

 

今日はアクチュアリー記号の計算の話を書きます. 

早速ですが, 次のような条件をみたす年金を考えます. 

  • 予定利率 (※) : i 
  • 年金給付期間: \infty
  • 年金給付条件:被保険者の生死によらず給付する (確定年金)
  • 年金給付額 : t 年目の年度初めに年金額  t を給付する (累加年金)

(※) 予定利率が  i であるとは,「お客さんの払い込んだ保険料を 1 年後に  1+i 倍になるよう運用する」という意味です. 

 

↑ のような年金の現価 (※) を, アクチュアリー記号では  (I\ddot{a})_{\infty} と書きます. 

(給付期間  \infty の確定年金なんていう現実味皆無な概念に対して記号が用意されているのウケるw)

(※) 年金の現価とは,「予定利率  i で資金を運用しながらお客さんに年金を給付するためには, 年金給付開始時現在で資金をいくら用意しておけばいいか」を表すものです. 

 

この年金現価  (I\ddot{a})_{\infty} について, 今日は, 次の問題の解き方を 2 通り紹介します. 

問題予定利率が  i のとき,  (I\ddot{a})_{\infty} はいくらになるか?

 

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二項係数の母関数で遊ぼう

こんにちは. 

ぱいです. 

 

今日は, 数列のいろいろな性質を示すときに母関数が役に立つという話を書きます. 

例えば, 二項係数  {}_{n}\mathrm{C}_{k} に関する次の定理を見てみましょう. 

ただし,  {}_{n} \mathrm{C}_{k} は, 非負整数  n,  k ( k \leq n) に対して次の式で定義される数列です. 

\begin{align} {}_{n} \mathrm{C}_{k} = \dfrac{n!}{ \ k!(n-k)! \ } \end{align}. 

定理 (ア)

非負整数  n,  m と正整数  k \leq n,m に対して, 次の (1), (2), (3) が成り立つ. 

(1)  {}_{n+1} \mathrm{C}_{k} = {}_{n} \mathrm{C}_{k} + {}_{n} \mathrm{C}_{k-1}

(2)  (k+1) \cdot {}_{n+1} \mathrm{C}_{k+1} = (n+1) \cdot {}_{n} \mathrm{C}_{k}

(3)  {}_{n+m} \mathrm{C}_{k} = \sum_{i=0}^{k} {}_{n} \mathrm{C}_{i} \cdot {}_{m} \mathrm{C}_{k-i}

 

二項係数  {}_{n} \mathrm{C}_{k} は, 組み合わせ論的には「 n 個のモノから順番を考慮せず  k 個を選び出す方法が何通りあるか」を表す数としても知られています. 

 

定理 (ア) の (1), (2) は多分中学・高校の教科書などにも載っている公式です.

次の 2 パターンの方針による証明に馴染みのある人も多いのではないでしょうか. 

(方針①) 分数  n! / k! (n-k)! を変形して代数的に証明する. 

(方針②) 組み合わせ論的に, モノを選び出すという事象をいろいろな視点で考察しながら証明する. 

 

でも, 定理 (ア) の (3) はあまり見慣れない公式で, ↑ の方針①, ②による証明は簡単ではないと思います (※). 

(※ 僕は方針①②で (3) を証明する方法を思いついていないので, 思いついた方は教えていただけると嬉しいです!)

(2023/06/24 追記. 不自然対数くんに組み合わせ論的な考え方教えてもらって, 普通にめちゃめちゃシンプルな考え方で行けました (*o*)なんで僕思いつかなかったんだろう…笑)

 

そこで役に立つのが, 「母関数」です!

この記事では, 数列  a_{0},  a_{1},  a_{2} ... に対して, 次のように表せる関数  G(t) を「数列  \{ a_{k} \} の母関数」と呼ぶことにします. 

(G は generating function (母関数) の頭文字から取りました.)

\begin{align} G(t) = a_{0} + a_{1}t + a_{2} t^{2} + \cdots . \end{align}

 

以下, 二項係数  {}_{n} \mathrm{C}_{k} の母関数を求めて, 母関数を駆使しながら定理 (ア) を証明します!

 

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数列空間の線形独立な非可算集合の話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

野球の世界大会 World Baseball Classic (WBC) で日本のチームが優勝して, 世間は盛り上がっていますね. 

じつは, その裏で, 与えられた線形空間に対してその基底を求める競技 World Basis Classic も密かに開催されていました. 

うそです. 開催されていません. 

(野球のほうの WBC はマジで開催されていて, 盛り上がっていたようです.)

 

そんな冗談を交えながら, Twitter で, 数列全体の空間  \mathbb{R}^{\mathbb{N}} がどんな基底を持つか知りたい 的な投稿をしました. 

すると, 有識者の方々からたくさんの有益コメントをいただけました. 

コメントたちを要約すると、次のような感じです. 

  1. おそらく,  \mathbb{R}^{\mathbb{N}} の基底を具体的に構成するのは無理っぽい. (選択公理が絡む.)
  2. でも, 線形独立な非可算集合だったら具体的に構成できる!

 

さて, この記事の目的は, 上記要約の 2 点目・線形独立な非可算集合について, 具体例を 2 個メモすることです. 

なお, 有識者の方々からいただいたコメントの詳細は, 下記ツイートのリプライ欄を参照してください. 

 

注意 : この記事において,  \mathbb{N} は正整数全体の集合を表します.  0 を含みません. 

 

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統計学における k 次モーメントの存在の話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

最近, むぐむぐ勉強会で数理統計学ゼミに参加して楽しい日々を送っています. 

そこで, 今日は次の問題を解説します. 

問題 0 \, < \, h \, < \, k とする. 
(1)  k 次のモーメントが存在すれば,  h 次のモーメントも存在するか?
(2)  h 次のモーメントが存在すれば,  k 次のモーメントも存在するか?

(1) は, ゼミの中で出てきた演習問題です. 

(2) は, (1) の逆って成り立つのかな~と気になって考えたものです. 

 

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半角の公式の話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

三角比の半角の公式の証明を書きたくなったので, 書きます. 

半角の公式 0^{\circ} \,<\, \theta \,<\, 90^{\circ} とする (※).
このとき, 次の (1), (2) が成り立つ. 

(1)  \cos \dfrac{\theta}{2} = \dfrac{ \ \sqrt{2+2\cos\theta} \ }{2}

(2)  \sin \dfrac{\theta}{2} = \dfrac{ \sin \theta }{ \ 2 \cos (\theta/2) \ }

(※) どんな実数  \theta でも同じような式が成り立ちますが, とりあえず  0^{\circ} から  90^{\circ} までの範囲で考えることにします. 

 

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