シン・ぱいおつ日記

ぱいおつが始まります

cos1° や sin1° は有理数か?

こんにちは. 

ぱいです. 

 

京都大学の入試の過去問でこんな問題があります. 

京大の過去問 (2006年後期) \tan 1^{\circ}有理数か?
この過去問の解答例はいろんなサイトで解説され尽くしているので割愛します.
 \tan 1^{\circ}有理数かどうかを考えたら, 今度は  \cos 1^{\circ} \sin 1^{\circ} についても次のような問題を考えたくなるのが人間のサガだと思います. 
問題 \cos 1^{\circ} \sin 1^{\circ}有理数か?
この問題について, 代数的整数論を使ったスマートな解き方を思いついたので, その解き方を解説します. 
なお, 代数的整数論を知らない人にも分かるように解説しますので, 知らない人も安心して読んでください♪
 

ガンマ関数の倍数公式の一般化 -証明その2-

こんにちは. 

ぱいです. 

 

このあいだ, ガンマ関数に関する下記の問題の解答例を書きました.  

問題任意の正整数  n と任意の複素数  z に対して以下の等式が成り立つことを示せ. 
\begin{align} \Gamma (nz) = \dfrac{n^{nz}}{ (\sqrt{2\pi})^{n-1} \sqrt{n} } \prod_{k=0}^{n-1} \Gamma \left( z+\dfrac{k}{n} \right) . \end{align}ただし,  \Gamma はガンマ関数とする. 
 
ガンマ関数にはいろんな定義があります: 
ガンマ関数のいろいろな定義(1)  \displaystyle \Gamma (z) := \lim_{N\to\infty} \dfrac{N^{z} \cdot (N!)}{(z+1)(z+2)\cdots(z+N)}.

(2)  \displaystyle \Gamma (z) := \int_{0}^{\infty} e^{-t} t^{z} \dfrac{\mathrm{d}t}{t}
など.
 
このあいだの記事では (1) の定義から出発して冒頭の問題を解きました. 
今回, ほかの定義から出発しても解く方法も分かったので, それを書きます. 

ガンマ関数の倍数公式の一般化 -証明その1-

こんにちは. 

ぱいです. 

 

このあいだ近所の数学好きな人たちとおしゃべりする機会があって, ガンマ関数に関する下記の問題についていっしょに考えました. 

問題任意の正整数  n と任意の複素数  z に対して以下の等式が成り立つことを示せ. 
\begin{align} \Gamma (nz) = \dfrac{n^{nz}}{ (\sqrt{2\pi})^{n-1} \sqrt{n} } \prod_{k=0}^{n-1} \Gamma \left( z+\dfrac{k}{n} \right) . \end{align}
ただし,  \Gamma はガンマ関数で, この記事では以下の定義を採用する. 
\begin{align} \Gamma (z) := \lim_{N \to \infty} \dfrac {N^{z} \cdot N!} {z(z+1)\cdots(z+N)}. \end{align}

今日の記事は, この問題の解き方を2通り紹介します.

1 つめはいっしょに話したおじちゃんに教えてもらった解法で, 2 つめは僕とおじちゃん(さっきのおじちゃんとは別の人)とで協力して考えた解法です. 

 

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アイゼンシュタインの判定法の判定法

こんにちは.

ぱいです.

 

今日は, アイゼンシュタインの判定法の判定法について書きます. 

つまり, 多項式の既約判定がテーマです. 

(「判定法の判定法」は誤植ではないです.)

 

なお, この記事では, 多項式の係数が整数の場合だけ を扱います. 

整数全体の集合を  \mathbb{Z} で表し, 整数係数の多項式全体の集合を  \mathbb{Z}[x] で表します. 

 

多項式  f(x)級数展開表示したときの各  k 次の係数を  a(f;k) で表すことにします. 

つまり,  f(x)級数展開表示を以下のように書きます. 

\begin{align} f(x) = a(f;n)x^{n} + \cdots + a(f;1)x + a(f;0).\end{align}

 

また, 以下の式をみたすような作用素  σ \colon \mathbb{Z}[x] \to \mathbb{Z}[x]シフト作用素 と呼ぶことにします. 

\begin{align} \exists \, u \in \mathbb{Z} \quad \mathrm{s.t.} \quad \forall \, f(x) \in \mathbb{Z}[x] , \ σf(x) = f(x+u). \end{align} 

定義 1 (既約判定に役立つ素数) f(x) を整数係数の n多項式とし,  p素数とする.
 p f(x) の既約判定に役立つ とは, あるシフト作用素 σ が存在して 下記の条件 (1) ~ (3) が成り立つときをいう. 

 (1)  a(σf;0),  a(σf;1), ...,  a(σf;n-1) はすべて  p の倍数である. 
 (2)  a(σf;0) p^{2} の倍数でない. 
 (3)  a(σf;n) p の倍数でない. 

 

次の定理 2 はよく知られています. 

定理 2 (アイゼンシュタインの判定法) f(x) を整数係数の多項式とする.
このとき,  f(x) の既約判定に役立つ素数が存在すれば,  f(x) は既約となる. 

 

例 3 (定理 2 の使い方) f(x) = x^{3} + 3x^{2} - 8 が既約かどうか判定する. 

 p = 3 f(x) の既約判定に役立つ素数である. 
実際, シフト作用素  σ \colon f(x) \mapsto f(x+2) に対して,  σf(x) = x^{3} + 15x^{2} + 18x + 12 なので,  p = 3 は定義 1 の条件 (1) ~ (3) をみたす. 
よって, f(x) は既約多項式となる. 

 

アイゼンシュタインの判定法は便利ですが, 既約判定に役立つ素数  p を闇雲に探すのはけっこう大変です. 

そもそも, 多項式によっては, 既約判定に役立つ素数  p が存在しない場合とかもあります. 

そこで, 「既約判定に役立つ素数の判定法」を作ってみました!

定理 4 (主定理:アイゼンシュタインの判定法の判定法) f(x) を整数係数の多項式とし,  p素数とする. 
 D(f) f(x) の判別式とする (※). 
このとき,  p f(x)の既約判定に役立つ素数であれば,  p D(f) の素因数となる. 
つまり, アイゼンシュタインの判定法に使えるような素数が存在するかどうかを調べるためには,  D(f) の素因数だけを調べれば十分である. 

(※) f(x) の判別式  D(f) の定義は後述します. 

 

以下, 「続きを読む」にて 定理 2・定理 4 の証明や定理 4 の使い方の具体例を紹介します. 

 

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5次方程式の解析的解法ゼミの話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

一般に, 5 次以上の代数方程式は四則演算とベキ根を取る操作で代数的に解くことは不可能と知られています. 

しかし, 特別な関数を用いて解析的に解くことは可能とも知られています. 

 

最近, オンライン上のゼミで, その解析的解法について皆で一緒に勉強しています. 

ゼミの予習ノートや発表スライドを, せっかくなので公開します. 

 

<ゼミの開催概要>

●場所:Discord のサーバー「ゆるくむぐむぐ勉強会」

●ゼミ名:「5次方程式の解析的解法ゼミ」

●日時:毎週木曜 22:00 ~ 23:00

 

このゼミに興味のある方は, サーバー管理者さん (※1) か僕 (※2) までお気軽にお声がけください~!

 

(※1) むぐれしあさん (Twitter:@Mgreshia4)

(※2) ぱい (Twitter:@END_OF_PAIOTU)

 

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行列式の余因子展開の微分バージョンの話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

最近, むぐむぐ勉強会でゼミを立ち上げて, 5次方程式の解析的解法について皆で学んでいます. 

そのゼミのテキストで面白い公式が出てきて, 面白かったので紹介します. 

(後述の定理 2 です.)

ザックリ言うと, 行列式の余因子展開の「微分バージョン」みたいな公式です. 

 

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二項係数 nCk が平方数となるような n と k

こんにちは. 

ぱいです. 

 

先日二項係数の計算をしていたら面白い問題を思いつきました: 

問題 n k を正整数とし,  k \neq 0, \ 1, \ n-1, \ n とする (※). 
このとき, 二項係数  {}_{n} \mathrm{C}_{k} が平方数となるような組  (n,k) は, 高々有限個しか存在しないか?それとも無限個存在するか?

(※)  k \neq 0, \ 1, \ n-1, \ n としている理由は, もし  k \neq 0, \ 1, \ n-1, \ n を許したら,  {}_{n} \mathrm{C}_{0} = 1^{2} {}_{n}\mathrm{C}_{1} = n から, 平方数となるような二項係数を簡単に無限個作れてしまって面白くないから.

 

解答例は, 「続きを読む」からどうぞ. 

 

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