シン・ぱいおつ日記

ぱいおつが始まります

ガンマ関数の倍数公式の一般化 -証明その2-

こんにちは. 

ぱいです. 

 

このあいだ, ガンマ関数に関する下記の問題の解答例を書きました.  

問題任意の正整数  n と任意の複素数  z に対して以下の等式が成り立つことを示せ. 
\begin{align} \Gamma (nz) = \dfrac{n^{nz}}{ (\sqrt{2\pi})^{n-1} \sqrt{n} } \prod_{k=0}^{n-1} \Gamma \left( z+\dfrac{k}{n} \right) . \end{align}ただし,  \Gamma はガンマ関数とする. 
 
ガンマ関数にはいろんな定義があります: 
ガンマ関数のいろいろな定義(1)  \displaystyle \Gamma (z) := \lim_{N\to\infty} \dfrac{N^{z} \cdot (N!)}{(z+1)(z+2)\cdots(z+N)}.

(2)  \displaystyle \Gamma (z) := \int_{0}^{\infty} e^{-t} t^{z} \dfrac{\mathrm{d}t}{t}
など.
 
このあいだの記事では (1) の定義から出発して冒頭の問題を解きました. 
今回, ほかの定義から出発しても解く方法も分かったので, それを書きます. 

 

一致の定理から, 実軸上で問題の等式が成り立つことを示せば十分です. 
そこで, 下記の「ガンマ関数の一意性」を使って問題を解きます: 
定理 (ガンマ関数の一意性)非負実数上の関数  G \colon (0,\infty) \to \mathbb{R} が以下の2点を満たすとする. 
  1. 任意の  x \in (0,\infty) に対して  G(x+1) = xG(x) である. 
  2. 任意の  x \in (0,\infty) に対して  G(x) \gneq 0 である. 
  3.  G は対数凸関数である. つまり,  \log G(x) の2階導関数について, 任意の  x \in (0,\infty) に対して  ( \log G(x) ) '' \geq 0 である. 
すると,  G(x) は以下のように表せる. 
\begin{align} G(x) = G(1) \Gamma (x). \end{align}
 
以下, 関数  G(x) \colon (0,\infty) \to \mathbb{R} を次の式で定めます: 
\begin{align} G(x) := n^{x} \prod_{k=0}^{n-1} \Gamma \left( \dfrac{x}{n} + \dfrac{k}{n} \right) . \end{align}
この  G(x) に対して, ガンマ関数の一意性の定理の条件が成り立つことはすぐにわかります. 
(実際, 1番は  \Gamma (z+1) = z \Gamma(z) から分かるし, 2番と3番は  G(x) の各因子が対数凸であることから分かります.)
 
よって, ガンマ関数の一意性の定理から, 以下の等式が得られます. 
\begin{align} n^{x} \prod_{k=0}^{n-1} \Gamma \left( \dfrac{x}{n} + \dfrac{k}{n} \right) = G(1) \Gamma(x) . \end{align} 
 x nz に置き換えれば, 以下の等式が得られます. 
\begin{align} n^{x} \prod_{k=0}^{n-1} \Gamma \left( z + \dfrac{k}{n} \right) = G(1) \Gamma(nz) . \end{align} 
あとは定数  G(1) の値を求めればよくて, その求め方は, このあいだの記事の「ステップ 2」で解説しました. 
 
(このあいだの記事を再掲しておきます)
最後まで読んでいただきありがとうございました!