こんにちは.
ぱいです.
今日は, アイゼンシュタインの判定法の判定法について書きます.
つまり, 多項式の既約判定がテーマです.
(「判定法の判定法」は誤植ではないです.)
なお, この記事では, 多項式の係数が整数の場合だけ を扱います.
整数全体の集合を で表し, 整数係数の多項式全体の集合を ] で表します.
多項式 を級数展開表示したときの各 次の係数を で表すことにします.
つまり, の級数展開表示を以下のように書きます.
\begin{align} f(x) = a(f;n)x^{n} + \cdots + a(f;1)x + a(f;0).\end{align}
また, 以下の式をみたすような作用素 を シフト作用素 と呼ぶことにします.
\begin{align} \exists \, u \in \mathbb{Z} \quad \mathrm{s.t.} \quad \forall \, f(x) \in \mathbb{Z}[x] , \ σf(x) = f(x+u). \end{align}
が の既約判定に役立つ とは, あるシフト作用素 σ が存在して 下記の条件 (1) ~ (3) が成り立つときをいう.
(1) , , ..., はすべて の倍数である.
(2) は の倍数でない.
(3) は の倍数でない.
次の定理 2 はよく知られています.
は の既約判定に役立つ素数である.
実際, シフト作用素 に対して, なので, は定義 1 の条件 (1) ~ (3) をみたす.
よって, は既約多項式となる.
アイゼンシュタインの判定法は便利ですが, 既約判定に役立つ素数 を闇雲に探すのはけっこう大変です.
そもそも, 多項式によっては, 既約判定に役立つ素数 が存在しない場合とかもあります.
そこで, 「既約判定に役立つ素数の判定法」を作ってみました!
を の判別式とする (※).
このとき, が の既約判定に役立つ素数であれば, は の素因数となる.
つまり, アイゼンシュタインの判定法に使えるような素数が存在するかどうかを調べるためには, の素因数だけを調べれば十分である.
(※) の判別式 の定義は後述します.
以下, 「続きを読む」にて 定理 2・定理 4 の証明や定理 4 の使い方の具体例を紹介します.
目次
定理 2 の証明
この節では, 背理法 を用いて, 定理 2 (アイゼンシュタインの判定法) の証明を紹介します.
(証明)
の既約判定に役立つ素数 が存在して, かつ, ある 次式 と 次式 を用いて と表せたと仮定します.
シフト作用素は多項式の既約性を保つので, σ が恒等写像のとき ( のとき) に既約判定に役立つ素数 が存在するとして一般性を失いません.
さて, なので, 定義 1 の条件 (1), (2) から, と の一方のみが素数となります.
が の倍数であり, が の倍数でないとしてよいです.
( ↑ あとで使うので, (☆) と置いておきます.)
に注目します.
定義 1 の条件 (1) と, が の倍数でないことから, が の倍数となることが分かります.
,..., に対して同様の議論を繰り返して, , ..., も の倍数となることが分かります.
最後に に注目して, 定義 1 の (3) から, は の倍数でないことが分かります.
( ↑ これもあとで使うので (☆☆) と置いておきます.)
の各係数を に落とし込んだものを で表すことにします.
すると, 定義 1 の条件 (1) ~ (3) から, となります.
また, (☆☆) から, となります.
よって, となります.
つまり, は の倍数となります.
ところが, これは (☆) に矛盾します.
したがって, 仮定は誤りとなり, は既約となります. ■
定理 4 の証明と具体例
この節では, 定理 4 (主定理) の証明とその具体例を与えます.
まず, 多項式の判別式を定義しましょう.
の根を , ..., とする.
このとき, を以下の式で定め, f(x) の 判別式 と呼ぶ.
\begin{align} D(f) := a(f;n)^{2n-2} \prod_{1 \leq i \lneq j \leq n} ( \alpha_{i} - \alpha_{j} )^{2}. \end{align}
判別式 は の係数を用いて計算できることが知られています.
例えば, 次多項式 の判別式は です.
次の命題 6 は判別式の定義から直ちに分かるので, 証明を省略します.
の各係数を に落とし込んだものを で表すことにします.
すると, 定義 1 の条件 (1) ~ (3) から, となります.
よって, は重根を持ちます. ( が重根.)
したがって, 命題 6 から, となります.
の判別式は なので, の素因数は存在しない.
よって, 定理 4 (主定理) から, の既約判定に役立つ素数は存在しない.
したがって, が既約かどうかを判定するにあたって, アイゼンシュタインの判定法は使えない.
最後まで読んでいただき, ありがとうございました!