こんにちは.
ぱいです.
京都大学の入試の過去問でこんな問題があります.
(目次)
第1節: 代数的整数論の準備
この節では, 冒頭の問題を解くために使う代数的整数論の準備をします.
代数的整数論をすでに知っている人は読み飛ばして大丈夫です.
まず, 通常の整数の特徴についておさらいしておきます.
が整数となるための必要十分条件は, 当たり前ですが, 次の係数が であるようなある 次多項式 ] に対して となることです.
整数のこの特徴を以下のように一般化したものが, 代数的整数です.
( 次多項式じゃなくても, 次とか 次とか何次多項式でもOK)
代数的整数全体の集合を で表します.
実際, に対して となります.
また, 2つの代数的整数が与えられたとき, それらの和について, 以下の命題が成り立ちます
(この命題もあとで使います)
この について, と が成り立ちます.
よって, が成り立ちます.
したがって, 任意の と に対して, 以下の等式をみたすような が取れます:
\begin{align} \gamma \alpha^{p} \beta^{q} = \sum_{\substack{0 \leq i \leq d-1 \\ 0 \leq j \leq e-1}} c_{p,q,i,j} \, \alpha^{i} \beta^{j}. \end{align}
つまり, たちを並べた 行ベクトルを と置いて, たちを並べた 次正方行列を と置けば, 以下の等式が成り立ちます.
\begin{align} \gamma v = A v. \end{align}
よって, は の固有値となります.
つまり, の固有多項式を と置けば, となります.
したがって, つまり は代数的整数となります. ■
これで準備が整ったので, 冒頭の問題を解きます!
第2節: 問題の解答例
結論からいうと, も も無理数となります.
まず, オイラーの公式 より, と について以下の関係が成り立ちます.
\begin{align} 2 \cos 1^{\circ} = e^{2\pi\sqrt{-1} / 360} + e^{-2\pi\sqrt{-1} / 360}. \end{align}
と はそれぞれ代数的整数なので, 命題 2 から, 和も代数的整数です.
つまり, となります.
さて, が有理数だったと仮定します.
よって, となります.
今, 命題 1 より なので, となります.
の取りうる範囲を考えると です.
この範囲にある整数は , , だけなので, 以下の等式が得られます:
\begin{align} 2 \cos 1^{\circ} = 0 \ \mathrm{or} \ \pm 1 \ \mathrm{or} \ \pm 2. \end{align}
ところが, はこれらのいずれの値も取らないので, 矛盾します.
よって, 仮定は誤りで, は無理数となります
が無理数となることも同様にして証明できます. ■
最後まで読んでいただきありがとうございました!