こんにちは.
ぱいです.
最近, むぐむぐ勉強会でゼミを立ち上げて, 5次方程式の解析的解法について皆で学んでいます.
そのゼミのテキストで面白い公式が出てきて, 面白かったので紹介します.
(後述の定理 2 です.)
ザックリ言うと, 行列式の余因子展開の「微分バージョン」みたいな公式です.
(目次)
行列式の余因子展開
まず, そもそも行列式の余因子展開とは何だったかをおさらいしておきましょう.
を 係数の 次正方行列とする.
各整数 と に対して, 行列 を以下の式で定める.
\begin{align} A_{i,j} := & A \, \text{から第} \, i \, \text{行と第} \, j \, \text{列を} \\ & \text{除いて得られる} \, n-1 \, \text{次正方行列.} \end{align}すると, の行列式 について, 以下の公式が成り立つ.
\begin{align} |A| &= \sum_{i=1}^{n} (-1)^{i+j} a_{i,j} |A_{i,j}| \quad (j: \text{fixed}) \\ &= \sum_{j=1}^{n} (-1)^{i+j} a_{i,j} |A_{i,j}| \quad (i: \text{fixed}). \end{align}
(証明)
\begin{align} \det : \mathrm{Mat}(n,K) \to K \end{align}が多重線形写像となっていることを使えば示せます. ■
微分バージョンの公式
ゼミのテキストで出てきた公式を紹介します.
以下の定理 2 です.
を 次多項式とし, その根を , , ..., と置く.
各整数 に対して, 多項式 を以下の式で定める.
\begin{align} f_{i}(x) := & f(x) \, \text{の積表示から因子} \, (x-x_{i}) \, \text{を} \\ & \text{除いて得られる} \, n-1 \, \text{次式.} \end{align}つまり,
\begin{align} f_{i}(x) = \dfrac{f(x)}{x-x_{i}} = \prod_{j \neq i} (x-x_{j}). \end{align}すると, の微分 について, 以下の公式が成り立つ.
\begin{align} f'(x) &= \sum_{i=1}^{n} f_{i}(x). \end{align}
(証明)
より, は以下のように表せます.
\begin{align} \log f(x) = \sum_{j=1}^{n} \log (x-x_{j}). \end{align}この両辺を微分すれば, 以下の等式が得られます.
\begin{align} \dfrac{f'(x)}{f(x)} = \sum_{j=1}^{n} \dfrac{1}{x-x_{j}}. \end{align}この両辺に をかければ, 欲していた等式が得られます. ■
定理 2 の証明は, ザックリ言えば, 対数を取る写像
\begin{align} \log : \mathbb{R}^{(\times)}_{\gneq 0} \to \mathbb{R}^{(+)} \end{align}が群の準同型になっていることを使っています.
定理 1 と定理 2 が, 公式の形も似ているし証明のしかたも似ているので, 面白いと思いました(小並感)
最後まで読んでいただきありがとうございました!