シン・ぱいおつ日記

ぱいおつが始まります

ほとんど至る所で連続となるが, ある稠密集合上のどの点でも下半連続とならない, 病的な上半連続関数

こんにちは. 

ぱいです. 

 

下記 3 点の条件を同時にみたす病的な実関数  f : \mathbb{R} \to \mathbb{R} を思いついたので, 解説します. 

条件
  • すべての点  a \in \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} において,  f は連続となる. 
  • すべての点  a \in \mathbb{Q} において,  f は下半連続とならない. 
  • すべての点  a \in \mathbb{R} において,  f は上半連続となる. 

 

さて, 関数  f : \mathbb{R} \to \mathbb{R} を, Dirichlet の関数っぽく下記の式で定めます. 

\begin{align} f (x) = \begin{cases} 0 & (x \notin \mathbb{Q} \setminus \{ 0 \} \ のとき) \\ \dfrac{1}{n} & (x \in \mathbb{Q} \setminus \{ 0 \}, \ x = \dfrac{m}{n} \ のとき) \end{cases} \end{align}

ただし,  x \in \mathbb{Q} のときの分数表示  x = m/n は既約分数とします.

また, 分母  n は必ず正となるように取り, 符号は分子  m の方で調整します. 

(※) このことから, すべての  x \in \mathbb{R} f(x) \geq 0 となります.

 

以下, 上記の関数  f が冒頭の条件 3 点を満たすことを証明します!

 

 

すべての a ∈ R \ Q で連続となることの証明

あとで上半連続性 (3 つ目の条件) を示すので, ここでは下半連続性だけ示せば十分です. 

(∵「連続 ⇔ 上半連続かつ下半連続」だから.)

 

 a \in \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} を任意に取ります. 

 f(x) x = a を代入すると,  f (a) = 0 です. 

一方,  f の定義直後の (※) で書いたように, すべての  x \in \mathbb{R} f(x) \geq 0 です. 

よって, 下記の不等式が成り立ちます. 

\begin{align} \liminf_{x \to a} f(x) \geq f(a) \end{align}

 

以上から, すべての点  a \in \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} において,  f は下半連続となります. 

 

すべての a ∈ Q で下半連続とならないことの証明

 a \in \mathbb{Q} を任意に取ります. 

 a の既約分数表示を  a = m/n ( n \gneq 0) とおくと,  f(a) = 1/n です. 

一方,  x \to a のときの  f(x) の下極限は  \liminf f(x) = 0 となります. 

よって, 下記の不等式が成り立ちます. 

\begin{align} \liminf_{x \to a} f(x) < f(a) \end{align}

 

以上から, すべての点  a \in \mathbb{Q} において,  f は下半連続となりません. 

 

すべての a ∈ R で上半連続となることの証明

 a \in \mathbb{R} を任意に取ります. 

 \varepsilon \gneq 0 を任意に取ります.

 1/N \leq \varepsilon を満たすような自然数  N も任意に取って置きます. 

(参照 : 下記のイラスト)

任意の実数  c r \geq 0 に対して, 中心が  c で半径が  r となる開球を  B(c;r) と書くことにします. 

つまり,  B(c;r) := \Big\{ x \in \mathbb{R} \ \Big| \ |x-c| \lneq r \Big\} です. 

 

さて,  a \in B(k/N; \, 1/N) となるように整数  k を取ります. 

以下, この開球  B(k/N; \, 1/N) を単に  B と書きます. 

また, 集合  \widehat{B} \widehat{B} := B \cap \mathbb{Q} と置きます. 

 

集合  S を下記の式で定めます. 

\begin{align} S := \left\{ \dfrac{p}{q} \in \widehat{B} \setminus \{ a \} \ \middle| \ p \in \mathbb{Z}, \ 0 \lneq q \leq N \right\} \end{align}

ただし,  p/q は既約分数表示とします. 

 

集合  V を下記の式で定めます. 

\begin{align} V := \Big( (B \setminus S ) \ の内部 \Big) \end{align}

すると,  V a の開近傍となります. 

(参照 : 下記のイラスト)

 x \in V を任意に取り,その既約分数表示を  x = p/q と置きます.

すると,  S の定義から  N \lneq q となります. 

このことと,  f(x) = 1/q と,  N の定義から, 下記の不等式が成り立ちます. 

\begin{align} f(x) \lneq \dfrac{1}{N} \leq \varepsilon \end{align}

また,  f の定義直後の (※) から,  f(a) \geq 0 です. 

よって, 下記の不等式が成り立ちます. 

\begin{align} f(x) \lneq \varepsilon \leq \varepsilon + f(a) \end{align}

 

以上から, すべての点  a \in \mathbb{R} において,  f は上半連続となります.

 

最後まで読んでいただき, ありがとうございました!