シン・ぱいおつ日記

ぱいおつが始まります

線分と長方形はいかにして区別できるかっていう話

こんにちは. 

ぱいです. 

 

今朝, 線分と長方形の区別についてこんなツイートをしました. 

 

せっかくなので, 下記 3 点の枠組みで線分と長方形がどのように区別できるかをメモしておきます. 

(2023/2/9 追記. 考えてた演算が線形ではなかったので, 群論の枠組みで考えなおしました. ご指摘いただいた方にこの場でお礼申し上げます.)

前提知識は, 大学学部程度の数学です. 

 

平面  \mathbb{R}^{2} の部分集合  L,  S は下記の式で定めます. 

(後々の議論を簡単にしたい都合で右端の点を予め取り除いています.) 

  •  L := [ 0,1) {\times} \{ 0 \}
  •  S := [ 0,1) {\times} [ 0, 1)

 L S を平面  \mathbb{R}^{2} 上に図示すると, 下図のようになります. 

L と S の図


この図を踏まえて, 以下,  L S をそれぞれ線分, 長方形の代表として扱います. 

(目次)

 

第1章 位相空間論の枠組み

この章では, 位相空間論の枠組みで線分  L と長方形  S が区別できることを説明します. 

つまり,  L S が同相でないことを示します. 

 

背理法を使います. 

 L S が同相だったと仮定します. 

すると, 連続な全単射  f: S \to L が取れます. 

 

 f(a) \neq (0,0) となるような点  a \in S を任意に取ります. 

(2023/2/9 追記.  a の取り方について誤植があったのを修正しました.)

 S からこの点  a を取り除いて得られる集合を  S^{*} と置きます. 

集合  L^{*} も同様に置きます. 

つまり, 集合  S^{*},  L^{*} は下記の式で表せます. 

\begin{align} S^{*} := S \setminus \{ a \} , \ L^{*} := L \setminus \{ f(a) \}. \end{align}また, 写像  f の定義域を  S^{*} に制限して得られる写像 f^{*} と置きます. 

 f は連続な全単射なので, 当然  f^{*} も連続な全単射です. 

 

さて,  S^{*} L^{*} の連結性に注目してみましょう. 

 S^{*} L^{*} を平面  \mathbb{R}^{2} 上に図示すると, それぞれ下図のようになります. 

S*とL*の図

 S^{*} は連結空間となっていることが, 図から読み取れます. 

したがって, その連続像  f^{*} (S^{*}) = L^{*} も連結となるはずです. 

ところが, 図から読み取れるとおり,  L^{*} は連結ではなく, 矛盾します. 

よって, 「線分  S と長方形  L は同相である」という仮定は誤りであることが分かります. 

つまり, 線分  S と長方形  L は同相ではなく, 位相空間論の枠組みにおいて区別できることが分かりました!

わーい!

 

第2章 測度論の枠組み

この章では, 測度論の枠組みで線分  L と長方形  S が区別できることを説明します. 

つまり, 平面  \mathbb{R}^{2} において  Lルベーグ測度と  Sルベーグ測度が異なる値を取ることを示します. 

 

以下, 集合  X \subset \mathbb{R}^{2}ルベーグ測度を  \mu (X) で表します. 

 

線分  L は, 下記の式のとおり, 長方形たちの降鎖の共通部分として表せます. 

\begin{align} L = \bigcup_{n=0}^{\infty} \Big( [ 0,1 ) {\times} [ 0,\dfrac{1}{2^{n}} ) \Big). \end{align}よって, 線分  Lルベーグ測度  \mu (L) は下記のように求められます. 

\begin{align} \mu (L) &= \lim_{n \to \infty} \mu \Big( [0,1) {\times} [0,\dfrac{1}{2^{n}}) \Big) \\ &= \lim_{n \to \infty} 1 \times \dfrac{1}{2^{n}} \\ &= 0. \end{align}

一方, 長方形  Sルベーグ測度  \mu (S) は, 明らかに下記のとおりです. 

\begin{align} \mu (S) = 1. \end{align}

 

以上から, 線分  L と長方形  S は異なるルベーグ測度を持ちます. 

よって, 線分  L と長方形  S は測度論の枠組みにおいて区別できることが分かりました!

わーい!

 

第3章 群論の枠組み

この章では, 群論の枠組みで線分  L と長方形  S が区別できることを説明します. 

つまり, 線分  L と長方形  S にそれぞれ適切な演算を入れてアーベル群とみなし, それらが同型でないことを示します. 

 

まず, 線分  L = [ 0,1) {\times} \{ 0 \} と長方形  S = [ 0,1) {\times} [ 0, 1) をどのようにアーベル群とみなすか説明します. 

 

どの点  (a,0) \in L も不等式  0 \leq a \lneq 1 をみたします. 

そのため,  L において, 任意の  (a,0), (b,0) \in L に対して下記の演算を定めるのが自然でしょう. 

  •  \overline{a} :=  a の小数部分
  •  (a,0) + (b,0) := (\overline{a+b}, 0)

同様に,  S において, 任意の  (a,b), (c,d) \in S および  \lambda \in \mathbb{R} に対して下記の演算を定めます. 

  •  (a,b) + (c,d) := (\overline{a+c}, \overline{b+d})

こうして演算を入れることで, 線分  L と長方形  S はそれぞれアーベル群となります. 

(特に, 準同型定理により,  L \cong \mathbb{R}/\mathbb{Z},  S \cong (\mathbb{R}/\mathbb{Z})^{2} と表せます.)

 

さて, 上記の前提のもとで, アーベル群  L,  S が同型でないことを示します. 

 x + x = 0 となるような点に注目します. 

 L において,  x + x = 0 をみたすような点  x \in L は下記の 2 個だけです. 

  •  (0,0)
  •  (\dfrac{1}{2}, 0)

一方,  S において,  x+x=0 をみたすような点  x \in S は下記のとおり 4 個あります. 

  •  (0,0)
  •  (\dfrac{1}{2}, 0)
  •  (0, \dfrac{1}{2})
  •  (\dfrac{1}{2}, \dfrac{1}{2})

以上から, 線分  L と長方形  S はアーベル群として同型ではありません. 

よって, 線分  L と長方形  S群論の枠組みにおいて区別できることが分かりました!

わーい!

 

取り留めもなくダラダラと思いついたことをメモしていっただけで申し訳ないですが, 最後まで読んでいただき, ありがとうございました!